都立ジュニア部会 精神科共通研修カリキュラム

はじめに

この都立病院ジュニア・レジエデント精神科共通研修カリキュラム(案)は、精神科七者懇談会の精神科研修プログラム(現時点では平成15年1月24日案)に準拠している。

経験すべき症例は、下記に記載中の経験目標で示された疾患を中心として、標準型カリキュラム(3ヶ月間)においては研修期間中に入院主治医として6例以上を、短期型カリキュラム(1~2ヶ月間)の場合には入院主治医として3例以上/月を担当する。また研修期間中の入院患者の状況に応じ、痴呆または症状精神病(せん妄)のどちらか一つを症例レポートとすることを認めるものとする。

具体的な研修プログラムは、各病院の臨床研修委員会が、精神科科長の助言に基づき、各病院の特色を生かしながら作成することが望まれる。

一般目標

精神症状を有する患者、ひいては医療機関を訪れる患者全般に対して、特に心理社会的側面からも対応できるために、基本的な診断及び治療ができ、必要な場合には適時精神科への診察依頼ができるような技術を修得する。具体的には、主要な精神疾患・精神状態像、特に研修医が将来、各科の日常診療で遭遇する機会の多いものの診療を、指導医とともに経験する。具体的には以下の目標がある。

  1. プライマリー・ケアに求められる、精神症状の診断と治療技術を身につける。
    • 精神症状の評価と鑑別診断技術を身につける。
    • 精神症状への治療技術(薬物療法・心理的介入方法など)を身につける。
  2. 身体疾患を有する患者の精神症状の評価と治療技術を身につける。
    • 対応困難患者の心理・行動理解のための知識と技術を身につける。
    • 精神症状の評価と治療技術(薬物療法・心理的介入方法など)を身につける。
    • コンサルテーション・リエゾン精神医学の技術を身につける。
    • 緩和ケアの技術を身につける。
  3. 医療コミュニケーション技術を身につける。
    • 初回面接のための技術を身につける。
    • インフォームド・コンセントに必要なコミュニケーションの技術を身につける。
    • 患者・家族の心理理解のための技術を身につける。
    • メンタルヘルス・ケアの技術を身につける。
  4. チーム医療に必要な技術を身につける。
    • チーム医療モデルを理解する。
    • 他職種との連携のための技術を身につける。
    • 病診(病院と診療所)連携・病病(病院と病院)連携を理解する。
  5. 精神科リハビリテーションや地域支援体制を経験する。
    • 精神科デイケア(ナイトケア・デイナイトケアを含む)を経験する。
    • 訪問看護・訪問診療を経験する。
    • 社会復帰施設・居宅生活支援事業を経験し、社会資源を活用する技術を身につける。
    • 地域リハビリテーション(共同作業所、小規模授産施設)を経験し、医療と福祉サービスを一体的に提供する技術を身につける。
    • 保健所の精神保健活動を経験する。

行動目標

  1. 精神および心理状態の把握の仕方および対人関係の持ち方について学ぶ。
    1. 医療人として必要な態度・姿勢を身につける。
      心(精神)と身体は一体であることを理解し、患者医師関係をはじめとして人間関係を良好に保つことに心を配ることを知識としてだけでなく、態度として身につける。
    2. 基本的な面接法を学ぶ。
      • 患者に対する接し方、態度、質問の仕方を身につけ、患者の解釈モデル、受診動機、受診行動を理解する。
      • 患者の病歴(主訴。現病歴、既往歴、家族歴、生活・職業歴、系統的インタビュー)聴取を行い、記録することができる。
      • 患者・家族への適切な指示・指導ができる。
      • 心理的問題の処理の仕方を学ぶ。
    3. 精神症状の捉え方の基本を身につける。
      • 陳述と表情・態度・行動から情報を得る。
      • 患者の訴えを聞きながら、疾患・症状を想定しそれに関する質問を行い、症状の有無を確認する。合わなければ別の疾患・症状を想定し直して質問し確認する。患者の陳述を可能な限りそのまま記載すると同時に専門用語での記載の仕方を学ぶ。
    4. 患者、家族に対し、適切なインフォームド・コンセントを得られるようにする。
      • 診断の経過、治療計画などについてわかりやする説明し、了解を得て治療を行う。
    5. チーム医療について学ぶ。 医療チームの一員としての役割を理解し、幅広い職種の医療従事者と強調・協力し、的確に情報を交換して問題に対処できる。
      • 指導医に適切なタイミングでコンサルテーションできる。
      • 上級および同僚医師、他の医療従事者と適切なコミュニケーションがとれる。
      • 患者の転入、転出にあたり情報を交換できる。
      • 関係機関や諸団体の担当者とコミュニケーションがとれる。
  2. 精神疾患とそれへの対処の特性について学ぶ。
    1. 精神疾患に関する基本的知識を身につける。主な精神科疾患の診断と治療計画をたてることがきる。
      気分障害(うつ病、躁うつ病)、痴呆、総合失調症、症状精神病(せん妄)、身体表現性障害、ストレス関連障害などの診断、治療計画をたてることができる。
    2. 担当症例について、生物学的・心理学的・社会的側面を統合し、バランスよく把握し、治療できる。
      脳の形態、機能とくに生理学的・薬理学的な側面すなわち生物学的側面、心理学的側面、家庭・職場などの社会学的側面から患者の状態を統合的に理解し、薬物療法、精神療法、心理・社会的働きかけなど状態や時期に応じてバランスよく適切に治療することができる。
    3. 精神症状に対する初期的な対応と治療(プライマリケア)の実際を学ぶ。
      初診や緊急の場面において患者が示す精神症状に対して初期的な対応の仕方と治療の仕方を学ぶ。
    4. リエゾン精神医学および緩和ケアの基本を学ぶ。
      一般科の外来、入院中の患者で精神症状が出現し、診療を依頼されたり、相談をされた場合、症例をとおして実際の対応の仕方について学ぶ。また緩和ケアの実際について学ぶ。
    5. 向精神薬療法やその他の身体療法の適応を決定し、指示できる。
      向精神薬を合理的に選択できるように、臨床精神薬理学的な基礎知識を学び、臨床場面で自ら実践して学ぶ。また、電気ショック療法などの身体療法の実際を学ぶ。
    6. 簡単な精神療法の技法を学ぶ。
      支持的精神療法および認知療法などの精神療法を実践し精神療法の基本を学ぶ。
    7. 精神科救急に関する基本的な評価と対応を理解する。
      興奮、昏迷、意識障害、自殺企図などを評価し適切な対応ができる
    8. 精神保健福祉法およびその他関連法規の知識を持ち、適切な行動制限の指示を理解できる。
      任意入院、医療保護入院、措置入院および患者の人権と行動制限などについて理解する。
    9. デイケアなどの社会復帰や地域支援体制を理解する。
      訪問看護、外来デイケアなどに参加し、社会参加のための生活支援体制を理解する。

経験目標

  1. 経験すべき診療法・検査・手技
    1. 基本的な身体診察法
      • 精神面の診察ができ、記載できる。
    2. 基本的な臨床検査
      • X線CT検査
      • MRI検査
      • 核医学検査(SPECT)
      • 神経生理学的検査(脳波など)
  2. 経験すべき症状・病態・疾患
    1. 頻度の高い症状
      • 不眠
      • けいれん発作
      • 不安・抑うつ
    2. 緊急を要する症状・病態
      • 意識障害
      • 精神科領域の救急
    3. 経験が求められる疾患・病態
      必須項目
      (A)の疾患については入院患者を受け持ち、診断、検査、治療方針について症例レポートを提出すること。
      (B)の疾患については、外来診療または受け持ち入院患者(合併症含む)で自ら経験すること。
      精神・神経系疾患
      1. 病状精神病(せん妄)
      2. 痴呆(血管性痴呆を含む):(A)
      3. アルコール依存症
      4. 気分障害(うつ病、躁うつ病):(A)
      5. 統合失調症(精神分裂病)
      6. 不安障害(パニック症候群)
      7. 身体表現性障害、ストレス関連障害:(B)
  3. 特定の医療現場の経験 精神保健・医療 精神保健・医療を必要とするか患者とその家族に対して、全人的に対応するために、
    1. 精神症状の捉え方の基本を身につける。
    2. 精神疾患に対する初期的対応と治療の実際を学ぶ。
    3. デイケアなどの社会復帰や地域支援体制を理解する。
    必須項目:精神保健センター、精神病院等の精神保健・医療の現場を経験すること。

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