月経困難症
月経困難症とは?
月経(生理)の期間中に、下腹痛、腰痛など月経痛(生理痛)といわれる痛みの症状の他に、吐き気、頭痛、疲労、脱力感、憂鬱、イライラ、下痢などの症状が日常生活に支障を与える場合に月経困難症と呼びます。
月経が来ている年齢の女性のうち、7割の方が、月経困難症の症状に悩まされているという報告もあります。
また、私達は、大規模な遺伝子解析で、月経困難症と遺伝の関連も明らかにしました。
(月経痛と関連の強い遺伝子領域を 新たに発見!)
(上記原文 英語)
月経困難症の分類
1. 機能性月経困難症
原因となる疾患がない月経困難症のことです。若い年齢の女性に多く、出産を経験することで症状が緩和されることが多いとされています。鎮痛剤やホルモン療法(低用量ピル、LEP製剤など)を用いて、症状の緩和を図ることができます。
2. 器質性月経困難症
主に子宮関連の疾患のために起こる月経困難症のことです。原因となる疾患は、①子宮内膜症 ②子宮腺筋症 ③子宮筋腫 ④子宮内膜ポリープ などです。
- ①子宮内膜症
子宮内膜に似た組織が、子宮以外のお腹の膜(腹膜)の表面や卵巣などにできてしまい、月経痛や慢性痛、性交時痛、排便時痛などを引き起こしてしまいます。また、妊娠しにくくなる(不妊)の原因にもなります。
- ②子宮腺筋症
子宮の筋層に子宮内膜と似た組織が入り込み、その周囲に筋層が肥大します。月経量が多くなったり(過多月経)、月経痛が重度(月経困難症)になります。不正出血の原因にもなります。子宮を温存する手術が非常に困難なため、長期のホルモン療法を行うか、子宮を摘出することが多くなります。
- ③子宮筋腫
子宮筋層にできる良性の腫瘍です。筋腫の位置により、症状は様々ですが、月経困難、過多月経の原因になります。
- ④子宮内膜ポリープ
子宮内膜にできるポリープです。主に、月経量が多くなることが多いですが、月経困難症の原因になることもあります。
月経困難症の治療
- 鎮痛薬
鎮痛薬を用いることで、月経痛を和らげます。かなり痛くなってから内服するより、痛くなりはじめに用いたほうが、効果が高いことが多いです。
- 低用量ピル、低用量エストロゲン-プロゲスチン配合剤(LEP製剤)
排卵や子宮内膜が厚くならないようにすることで、月経量が少なくなり、痛みも軽くなります。
- 子宮内システム
子宮内にプロゲスチン含有の子宮内システムを挿入する方法です。プロゲスチンというホルモン剤が子宮内に効果をもたらし、子宮内膜が厚くならないため、月経量が少なくなり、痛みが改善します。
- 偽閉経療法(GnRHアンタゴニスト、GnRHアゴニスト)
エストロゲンを抑えることで、閉経の状態にすることができます。月経が来なくなるため、月経痛や過多月経はなくなります。また、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫の増悪を抑えます。
月経痛がひどくなってきている場合や、月経量が多くなってきている場合には、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などを罹患していることもありますので、一度、産婦人科を受診することをお勧めします。